出産レポ④帝王切開の手術室。はりつけになった私を支えてくれた手。

出産レポ第4話。帝王切開の手術室で、両腕を固定された私を支えてくれた夫の手 出産・入院レポ
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帝王切開が決まり、夫婦二人で手術を待っていた前回からの続きです。

→【出産レポ③】いよいよ無痛分娩開始。夫婦二人で過ごす最後の時間。

「予定を繰り上げます。」

夫と二人で手術を待っていると、急に周囲が慌ただしくなりました。

助産師さんが近づいてきて、一言。

「予定を繰り上げます。」

予定より早く帝王切開を始めることになったようです。

このとき、理由についての説明はありませんでした。

いよいよ、この時が来ました。

準備が整うまで、夫とは一度ここでお別れです。

「また後でね。」

「頑張って。」

それだけ言葉を交わして、夫は一度手術室を出ました。

私は分娩台から立ち上がり、カーテンを隔てた手術室へ歩いて向かいます。

分娩着のまま。

点滴も、無痛分娩のために背中へ入れていた麻酔の管もつけたまま。

さっきまで夫と二人で静かに過ごしていたのに、急に物事が進み始めました。

「これからお腹を切るんだ。」

そのことをなるべく考えないようにしながら、一歩ずつ手術台へ向かいました。

十字架のような手術台

手術台を見て、最初に思ったこと。

――十字架?

十字架の横棒のように左右へ伸びた台。

手首を置くあたりには、いかついベルトがついています。

――はりつけにされるのか、私。

(これって……暴れないため?)

私の頭の中では、

「暴れる=痛みに耐えられない」

というイメージでした。

急に怖くなって、近くにいた助産師さんに聞きました。

「麻酔が効かなかったり、途中で効かなくなったりすることってないですよね……?」

返ってきた答えは、

「人によります。」

…………。

医療従事者だもの。

嘘つけないよね。

聞かなきゃよかった。

その一言で、不安が一気に大きくなりました。

もうすぐ、本当に手術が始まる。

ようやく実感が湧いてきました。

誰が誰だかわからない手術室

手術室には、想像していた以上にたくさんの人がいました。

先生、助産師さん。

みんな帽子をかぶり、マスクをしています。

目元しか見えないので、誰が誰なのかまったく分かりません。

それまでずっと支えてくれていたアネゴも、どこかにいるはずです。

でも、見分けがつきません。

知っている人がいるはずなのに、知らない人たちに囲まれているような気分でした。

そんな中、私の右側には、一人の助産師さんがついてくれました。

正式に「手を握る担当」という役割だったのかは分かりません。笑

でも、私が怖がっているのを察して、

「名前は決まってる?」

「退院したら何食べる?」

と、ずっと何気ない話をしてくれました。

そして、ずっと右手を握ってくれていました。

正確には、「握ってもらっていた」というより、私が必死に握りしめていたのかもしれません。

それが、ものすごく心強かったです。

「7割くらい成功する」私はどうやら3割でした

やがて院長先生が来て、追加の処置が始まりました。

このとき先生から、

「7割くらい成功するんだけど、成功するとすごく術後が楽なんだよね。」

という説明がありました。

何をどうする処置だったのか、正直なところ私はきちんと理解できていませんでした。

でも、頭に残ったのは、

7割。

半分以上。

それならきっと大丈夫。

私は当然のように、自分は7割の方に入ると思っていました。

朝の処置のときのように身体を丸め、背中に処置を受けます。

その後、仰向けになって両手首を固定されました。

はりつけです。

しばらくして、先生から、

「足、上がりますー?」

と聞かれます。

「はーい。」

言われた通り、足を上げました。

すると先生が、

「あれぇ?」

と一言。

…………。

何に対する「あれぇ?」ですか?

足が上がったらダメなの?

効いてないの?

先生の何気ない一言で、不安が一気に跳ね上がります。

どうやら、私は7割の方ではなかったようです。

こういうときだけ、少数派を引き当てなくていいのに。

今、ケンカしないでください

最初の方法ではうまくいかなかったようで、背中に入っていた無痛分娩の管から、さらに麻酔を入れることになりました。

それが効くのを待っていると、先生と助産師さんの間に何やら不穏な空気が。

詳しい内容は覚えていません。

ただ、助産師さんが、

「でも……」

と言いかけると、院長先生が強い口調で遮りました。

「僕は受け付けるなって言ったよね。なんで通しちゃったの。」

というような内容だったことは覚えています。

助産師さんは、目に涙を浮かべています。

こちらは、これからお腹を切られる状態です。

(いや、今?)

(患者の前だぞ……?)

こちらはベルトで固定され、見守ることしかできません。

声、聞こえます。
表情、見えます。

(今、ケンカしないで……。)

(せめてお腹を閉めてからにして……。)

心の中で必死にお願いします。

(チーム一丸であれ。)

ただでさえ麻酔の処置が思うようにいかず、不安が限界まで高まっているところです。

後から、同じ時期に入院していた方に聞いたところ、その頃1階の外来もかなり慌ただしかったそうです。

おそらく、私の帝王切開が予定より早まったことで、外来との調整が必要になっていたのだと思います。

もちろん、本当の事情は分かりません。

今振り返れば、先生も助産師さんも予定外の対応に追われていたのでしょう。

でも、そのときの私には、そんな事情を考える余裕なんてありませんでした。

これから手術するのに、今ケンカしないで。

本当に、それだけでした。

左手は夫、右手は助産師さん

手術の準備が整うと、夫がもう一度中へ呼ばれました。

私の左側へ来て、手を握ってくれます。

左手は夫。

右手は、手を握る担当の助産師さん。笑

私は二人の手を、それぞれぎゅっと握っていました。

怖くて、夫と何を話したのかはほとんど覚えていません。

きっと、まともな会話はしていなかったと思います。

でも、手の感触だけは覚えています。

私が強く握っても、二人とも離さずにいてくれました。

何か特別な言葉をかけてもらったわけではありません。

ただ、両側から手を握ってもらえているだけで、

「大丈夫。」

と言ってもらえているような気がしました。

一人だったら、とても耐えられなかったと思います。

痛くない。でも、怖い。

麻酔が効いたことを確認すると、いよいよ手術が始まりました。

私から手術をしているところは見えません。

胸元には仕切りがあり、お腹側は見えないようになっています。

見えなくてよかった。

見えたら絶対に無理です。

痛みはありません。

でも、何も感じないわけではありませんでした。

お腹の中を触られている。

押されている。

引っ張られている。

そんな感覚は、なんとなく分かります。

痛くはない。

でも、怖い。

何をされているのか想像すると、さらに怖くなる。

私はなるべく、お腹のことを考えないようにしました。

天井のライトも眩しい。

目を閉じると、今度は手術のことばかり考えてしまう。

だから夫と助産師さんの手を握りながら、先生たちの声を聞いていました。

手術は、私の恐怖とは関係なく進んでいきます。

痛くない。

でも、怖い。

私は両手をぎゅっと握りながら、息子が出てくるのを待ちました。

→【出産レポ⑤】はじめまして。「君がお腹の中にいたのかぁ」。手術は続く。

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