出産レポ⑤はじめまして。「君がお腹の中にいたのかぁ」。手術は続く。

出産レポ第5話。帝王切開で誕生した赤ちゃんを手術台の上で初めて抱っこした瞬間 出産・入院レポ
この記事は約5分で読めます。

帝王切開が始まり、夫と助産師さんの手を握りながら、息子が生まれるのを待っていた前回からの続きです。

→【出産レポ④】帝王切開の手術室。はりつけになった私を支えてくれた手。

「赤ちゃん、向きがよくないねぇ」

しばらくすると、先生の声が聞こえました。

「赤ちゃん、向きがよくないねぇ。」

それが私に向けた言葉だったのか、スタッフに向けた言葉だったのかは分かりません。

でも、しっかり耳に入りました。

……今、不安になること言わないでください。

帝王切開をすると決まってから、私はずっと、

「これで息子は無事に生まれてくる。」

そう思おうとしていました。

なのに、手術中に聞こえてきた「向きがよくない」という言葉。

何がどうよくないのか。

すぐに生まれるのか。

息子は大丈夫なのか。

また頭の中に不安が広がります。

でも、私にできることは何もありません。

夫と助産師さんの手をぎゅっと握りながら、待つしかありませんでした。

「泣いた。生きてる。よかった。」

そして、ついにその瞬間がきました。

手術が始まってから、5分も経っていなかったと思います。

お腹を強く押されるような感覚があり、

息子がお腹の中から外へ出ました。

先生が息子を掲げます。

一呼吸あって、

泣き声が聞こえました。

――無事出た。

――泣いた。

――生きてる。

――よかった。

そして、

――泣き方へただなぁ。笑

これが、息子が生まれたときの私の最初の感想でした。

顔を見た瞬間に、

「かわいい!」

「愛おしい!」

と感情が一気にあふれたわけではありません。

まずは、

「生きてる。よかった。」

でした。

息子は元気に泣いていました。

でも、なんだか上手に「オギャー!」と泣けず、私には少し頼りない泣き方に聞こえました。

その声を聞きながら、

「今日一日、苦しかったね」

「ごめんね」

「君もがんばってたんだね」

と思いました。

陣痛の間、息子の心拍が下がるたびに不安でいっぱいだった私。

無事に外へ出てきてくれた。

そのことが、何よりうれしかったです。

「君がお腹の中にいたのかぁ」

生まれた息子は、すぐに身体をきれいにしてもらい、少し離れたところで状態を確認してもらっていました。

私はまだ手術台の上です。

しばらくすると、息子を私の顔の近くまで連れてきてくれました。

このとき、両腕のベルトを外してもらいました。

はりつけ終了です。笑

左腕に息子を抱かせてもらい、顔をじっと見ます。

――小さい。

――やっぱり泣き方へた。

――君がお腹の中にいたのかぁ。

――やっと会えたね。

ずっと胎動を感じていた相手が、今、目の前にいる。

でも、不思議なくらい実感がありません。

10か月近くお腹の中にいたのに、はじめまして。

「あぁ、3Dエコーの写真と同じ顔だ。」

と思いました。

ずっと一緒にいたのに、はじめまして。

なんとも不思議な感覚でした。

少しして、

「あ、かわいい。」

と思いました。

最初から感情が一気に押し寄せたわけではありません。

ただ、目の前にいるこの小さな人が、

本当に私のお腹の中にいたんだ。

少しずつ、そのことを実感していきました。

息子だけを見ていた本当の理由

手術中、私はずっと息子を見ていました。

生まれたばかりの我が子から目を離せない。

そう書くと、なんだか感動的に聞こえるかもしれません。

でも、本当の理由は少し違います。

息子を見ていないと、怖かったんです。

息子が生まれても、私の手術は終わっていません。

痛みはありません。

でも、お腹の中を触られている感覚はあります。

何をされているのか想像すると、怖くてたまりません。

途中、掃除機のような音も聞こえました。

何の音かは考えたくない。

だから、ひたすら目の前の息子を観察することに全神経を集中させました。

小さいな。

本当にいるな。

一生懸命泣いてるな。

息子のことを考えて、自分のお腹から意識を逸らしていました。

かわいくて仕方なくて見つめていた、というより、

あのときは、息子に助けてもらっていたんだと思います。

「眠る麻酔を入れようね」

息子との対面が終わり、夫と息子は先に手術室を出ました。

私はそのまま手術台の上です。

「この後の処置はちょっと感触気持ち悪いと思うから、眠る麻酔入れようね。」

顔に酸素マスクが当てられます。

「大きく深呼吸してください。」

言われた通り、ゆっくり息を吸います。

「数を数えてください。」

いーち。

にー。

さーん……。

どこまで数えたのかは覚えていません。

そこで、私の記憶は途切れました。

目が覚めたら、まだ手術室

次に目を開けたとき、私はまだ手術室にいました。

てっきり眠っている間に病室へ戻って、次の日の朝になっているくらいのイメージでした。

でも、まだ手術室。

手術が終わる直前だったのだと思います。

どこからか、

バチッ。

バチッ。

という音が聞こえました。

医療用ホチキスの音のようです。

麻酔でぼんやりしている中、私が最初に言ったのは、

「麻酔ってすごいですね……。」

でした。

さらに、

「起きたら翌日になってるのかと思ってました。」

とも言った気がします。

手術室で目を覚ました人の第一声としては、ずいぶんのんきです。笑

でも、そのときは本当に、

「一瞬で時間が飛んだ。麻酔ってすごい。」

と驚いていました。

病室で待っていた夫と息子

手術が終わると、私はベッドへ移され、病室へ戻りました。

身体は重く、頭もぼんやりしています。

病室には、夫と息子が待っていました。

夫は息子を見ながら、何度も私に、

「ありがとう。」

と言ってくれました。

私は何と返したのか覚えていません。

ただ、夫が愛しそうに息子を見ていたことは覚えています。

夫婦二人だったところに、一人増えた。

ほんの少し前までお腹の中にいた息子が、今は夫のそばにいる。

それでもまだ、

「本当に生まれたんだ。」

という実感は、どこか遠くにありました。

陣痛も、麻酔も、手術も終わった。

息子も無事だった。

とにかく、終わった。

そのことに、ただホッとしていました。

保育器としての役割は、ここで終わり

破水してから約1日半。

息子は、無事に生まれてきてくれました。

保育器としての私の役割は、ここで終わり。

そう思うと、ホッとしました。

でも、その安心も束の間。

ここから、外の世界で息子を育てる毎日が始まります。

予定していた無痛分娩から、帝王切開へ。

思い描いていた出産とは違ったけれど、今振り返って思うことがあります。

→【出産レポまとめ①】理想の出産ではなかった。そんな私が伝えたいこと。

そして、出産が終わったその日から始まったのが、帝王切開後の入院生活でした。

→【産後入院レポ①】帝王切開後、身体が動かない。翌日歩けるようになるまで

タイトルとURLをコピーしました